ホームインスペクション(住宅診断)
これまでの中古住宅売買時の建物の現状把握は、主に建物の知識に乏しい仲介業者が行っていました。ほぼ表面上の確認のみの現状把握で、チラシには『売りがアピールできる部分』を大きくクローズアップし瑕疵や欠陥部分は隠蔽される傾向がありました。日本における中古住宅の取引形態として『現状有姿』の特約が設けられ、取引後に発覚した瑕疵に対応してもらえるケースは少ないと言えます。そしてほとんどの場合、事前点検を行っていないので引き渡し後にいろんな箇所の補修が必要と判り、修理費用が予想以上に嵩みリフォーム予算を削らざるを得ないケースも少なくありません。
欧米では中古住宅購入前に『ホームインスペクション』と呼ばれる住宅診断の実施が常識であり、その診断結果を元に物件を購入するかどうかを検討します。そうする事によって事前にリフォームにかかる費用を算出し全体の予算組ができる大きな判断材料になっています。そもそも何を買うにしても、そのものがどのような状態であり、修理費用がどのくらいかかるかを知ることは当たり前であると思います。
また皆様がお住まいの大切なご自宅においても、実際に現在その家がどのような状態であるのか?その他に気になるところはあるけれど、それが早急に修理しなければならないものなのか?等、ホームインスペクションを実施することにより確実に現状把握することができます。『外壁の塗装をしようと思っていたが、ホームインスペクションの実施によりそれよりも優先しなければならない箇所が見つかった』という事例がたくさんあります。
戦後の日本は新築一辺倒でしたが、その結果既存住宅が飽和状態となり現在の日本全体の住宅戸数の約13.6%(約850万戸)が空き家となっています。これは大きな社会問題で
ある上、日本の住宅の価値を下げる一方であります。日本の住宅は約20年で資産価値がゼロになると言われています。この税制も今までの新築優先の考えの表れ
ではないでしょうか。中古住宅だから悪いということは決してなく、しっかりと点検維持補修を定期的に行えば50年、100年住み続けることも可能なのです。
こういった現状を踏まえ、2013年6月に国土交通省から『インスペクションガイドライン』が策定されました。中古住宅の流通活性化の為に、消費者保護の為には売買時のホームインスペクションは不可欠であります。ガイドラインにはたくさんの項目が策定されていますが、最も重視されるべきものは『第三者中立性』であります。
『依頼者が納得して物件を購入する為に中立的に診断する』を念頭に、診断する側も大変な責務とやりがいが感じられるものであります。今後は欧米のように『ホームインスペクション』が広く普及することは間違いないと確信します。
2018年には宅建業法の一部改正があり、 重要事項説明書に『住宅診断の有無』という項目が 設けられ、宅建業者への住宅診断の説明義務が 法律で定められました。ホームインスペクションは 普及の一途をたどっています。
『人と不動産のよりよい関係』また『不動産と建築のよりよい関係』の為にホームインスペクション普及に尽力したいと考えています。